共鳴り
さすがに驚いて、言葉の意味を確認するように、それぞれが嶋さんの顔を見た。


だけども彼は煙を吐き出しながら、それにため息を混じらせる。



「俺も旅に出なきゃならねぇからよぉ。」


「……え?」


「ムショだよ、ムーショ。
俺が入らなきゃもう、ダメみてぇなんだよなぁ。」


頭が上手く働かない。


言葉の意味を噛み砕くより先に、嶋さんは更に続けた。



「強制捜査の情報が漏れてるって警察もわかってんだよ。
内部に情報を漏えいさせた人間がいるとなると、ヤクザとの繋がりがあるってことだろう?」


頭の中で、全てが繋がっていく。


先ほど国光さんが、話があるとか言ってたのは、これやったん?


つまりは嶋さんひとりがパクられることで、事態を収束させようというつもりらしい。


ひどく混乱したままの俺らに、彼は言う。



「お前らは元々、俺が飼い始めた犬だ。
ヤクザでもねぇ預かりみてぇな身なんだし、俺がいなくなりゃあ用はねぇ。」


やっぱり上手く頭が回らなかった。


空は次第に白み始め、真っ黒い色だったものを明るい光で包むよう。



「…じゃあ、俺らはもう…」


「早く病室戻れ、ってことだよ。」


もう誰も、苦しまなくて良いということ?


清人もレナちゃんも飛び降りなくて良くて、俺も理乃を愛して良いってこと?


あんな仕事、もうしなくても良いってことだろうか。



「息子同然のヤツに目の前で死なれるのなんか迷惑だ、っつったろう?」

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