共鳴り
「それより清人、お前すげぇ血だぞ?
何かそこまでいくと気持ち悪ぃから、さっさとこっち来いよ。」


そんな嶋さんの言葉で、弾かれたように清人の腹部に視線を移すと、服は大部分が鮮血に染まり、さすがに驚いてしまうのだが。


お前、よくこんなんで普通に生きてるな、ってほどや。



「ほら、ネーチャンもこっち来いよ。」


事もなさげに嶋さんは、更にレナちゃんを呼んだ。


彼らは少し迷いながらも顔を見合せ、そしてフェンスを頼りにこちらへと戻ってくる。


俺はほっと安堵した。


そこまでの全てを見届けると、嶋さんはきびすを返し、さっさと立ち去ってしまう。


俺らは馬鹿みたいに取り残された格好やった。



「…何か、これからどうしよう、って思ってんの、俺だけ?」


「いや、お前は間違いなくこの後医者に説教されて、傷塞ぎ直さなあかんと思うで?」


間抜けな夜明けやった。


それでも、俺らの夜は二度と明けることがないとすら思っていたのに。


崩れ落ちるようにその場にしゃがみ込むと、実はすげぇ痛かったんだけど、なんて清人は言う。



「それよりお前、どんだけ俺の寿命縮めれば気が済むねん!」


「あぁ、悪ぃ悪ぃ。」


全然悪びれてへん顔で言われても、って感じやけど。



「まぁ、もう何でもえぇわ。
何や俺も拍子抜けやし。」


「つーか俺ら、ホントにもう普通に生きて良いのかな?」


清人の呟きに言葉を返さず、空を見上げた。


朝日がゆっくりと昇る中で、この5年の痛みと重さを噛み締める。


実感はないが、もう本当に俺らは、解放されたってことやろう。

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