共鳴り
清人は医者に強制連行されていた。


俺とレナちゃんはとりあえず病室に戻ってみたが、そこには国光さんの姿。



「話は聞いた?」


いつの間にかくちゃくちゃとガムを噛みながら、当然のように禁煙の場所で、窓を開けっ広げて煙草を吸う。


もう、脱力する以外にないわけやけど。



「…嶋さん、ムショ入るんやってな。」


「うん、仕方がないけどね。」


「国光さんはどうなるん?」


「俺は事後処理とかあるしねぇ。
てゆーか俺、あんなとこ二度と入りたくないし。」


ガムないと死んじゃうよー、と言う顔に、俺は軽い眩暈を覚えてしまう。


視線を移してみれば、レナちゃんは国光さんを見て、明らかに正体不明だったようで、ドン引きな顔してた。



「レナちゃん、このおっさんには気をつけた方がえぇよ。
ただの怪しい人やから。」


「失礼だなぁ、お前は。
てか、昔から俺にそういうこと言うの、陸だけだよね。」


陸、と国光さんは言ったんや。


驚いて顔を向けると、やっぱり彼はへらへらと笑っていた。


どうやら俺ら、本当にもう、“飼い犬”ではないようや。



「ヤクザは半径1メートル以内に近付かんといてー。
怖いし警察呼ぶでー。」


「いきなりそういうこと言う?
あれだけ世話してやったのにさぁ。」


「世話してたのは俺の方やん。
ホンマにアンタ、“チャラ光さん”やな。」


あははっ、と彼は笑う。


やっぱり俺は呆れていて、レナちゃんは愛想笑いだけだった。

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