共鳴り
国光さんは笑いながら、レナちゃんを見た。



「命は粗末にするもんじゃないよ。
生きてるとね、辛いことと同じだけ、楽しいことはあるから。」


楽観的なこの人らしい台詞やろう。



「じゃあ、俺はそろそろ戻らなきゃ。」


彼がきびすを返そうとした刹那、俺は国光さん、と声を上げた。


振り返った顔は、やっぱり楽しそうなもの。



「ホンマにありがとう。
今まで、俺らのこと可愛がってくれて、ホンマ感謝してる。」


自意識過剰だなぁ、と彼は笑う。


けど俺ら、本当に殺されるならすぐやったはずや。



「お前らはもう、俺らとは無関係だからね。
ここには誰も近付けさせないから、安心して。」


「…国光、さん…」


「キヨくんにも、早く元気になってね、って伝えておいて?」


それだけ言って、国光さんは短くなった煙草を放り投げ、部屋を出た。


ふわりとカーテンが舞い、秋の風が吹き抜ける。


優しい人だと思いながら、俺はその後ろ姿を見つめて、笑った。



「レナちゃん、疲れてへん?
あんま顔色良くないみたいやし、アイツ戻ってきたら俺が起こしたるから、寝ててえぇよ?」


「…いや、でも…」


「女の子は無理したらあかんやん。」


清人の大事なものは、俺の大事なものでもある。


レナちゃんは、言った俺に肩をすくめ、ありがとう、と言ってくれた。

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