共鳴り
嶋さんはいぶかしげに眉を寄せた。



「5年前、助けてくれた時に、礼言うべきやってん、俺ら。
それやしアンタのこと、いっぱい勘違いしてた。」


「馬鹿じゃねぇのか、お前。」


「そうやろうけどねぇ。
んでも、命助けてくれてありがとさん。」


言っておきたかった。


きっと清人は嶋さんと似てるから、こんなん口が裂けても言えへんやろうし。


色んなものが晴れて、ちょっと清々しかってん。



「おっさんやのにムショ入るってのも、それなりに心配してん、俺。」


「てめぇに心配されたくねぇよ。」


「言うと思ってたわ。
それでもな、アンタは心配されるんダサいと思うやろうけど、でも俺はアンタのこと待ってるで。」


驚いて、そして嶋さんは呆れたような顔に変わる。


この人だって人間で、それでも確かに俺らの親代わりやから。



「清人もきっとわかってるはずや。
レナちゃんもやし、国光さんかてアンタのこと嫌いちゃうはずやから。」


言葉にしてみれば、5年の苦々しさは引いていく。


秋晴れの空のように、澄んだ気持ちになれた気がした。



「もう行くんやろ?」


「あぁ。」


「清人だけでも起こそうか?」


「良いよ、んなもん。
今は寝かせといてやりゃあ良いし、どうせこの馬鹿、そのうち自分から俺に会いに来るだろうしよ。」


よくわかっていらっしゃる。


ふたりの寝顔を見つめる瞳は、少しばかり優しく見えた。

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