共鳴り
「なぁ!」


呼び止めると、嶋さんはまた眉を寄せた。



「…レイコさんのことは?」


あぁ、と彼は思い出したように言う。


そしてふっと口元を上げ、放っときゃあ良い、と言った。



「アイツは俺が居なくなっても好きに生きるだろうよ。」


「…ホンマにそうなんかな?」


「うるせぇヤツだなぁ、てめぇも。
そんなに心配か?」


「だって俺、レイコさんのことめっちゃ好きやもん。
姉ちゃんみたいやし、ホンマに優しい人やから。」


「…優しい?」


嶋さんは更に眉を寄せる。



「あの人、多分めっちゃ苦しんだ過去があるはずやねん。
壁作ってるだけで、ホンマは脆くて、結局は弱いはずやねん。」


「…何でそう思うんだ?」


「悲しんだ分だけ、人は優しくなれるんやて。」


嶋さんは笑っていた。


お前にゃ敵わねぇな、と言いながら、手をヒラヒラとさせ、きびすを返す。


嶋さんは多分、誰を傷つけたとしても、レイコさんだけは傷つけなかったんやと思う。


やっぱりその理由はわからへんけど、俺は最後まで聞かなかった。


清人の安らかな寝顔に心底安堵して、おやすみ、と言い、部屋を出る。


昼下がりの陽射しが、嫌に眩しかった。

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