共鳴り
この頃くらいから、当時小6だった清人の弟、マサが荒れ始めた。


問題ばっか起こして、学校から呼び出しを喰らうが、当の母親である奈緒子さんは、興味もないとばかりにそんなの無視。


だから余計、荒れてたんやろうけど。


兄妹全員父親が違い、奔放な母とまだ小さな妹、仕事ばかりの血の繋がらない父との中で、マサなりに苦しんでいたのかもしれない。


でも、辛うじて清人の言うことだけは聞くから、結局また、アイツが背負うものが増えて行く。


俺もそれなりに、マサの所業は心配の種ではあった。


清人はそういうの、やっぱり言ってはくれなかったけど、俺にとっては園の子と同じようなものだったのかもしれない。



「陸兄は結局他人だろ!
アンタには俺の気持ちなんかわかんねぇんだよ!」


マサは俺のことを、陸兄、と呼んでいた。


そして、心配なんかされたくない、もう放っといてくれ、を連発。


その度に清人が代わりに謝ってくれて、悲しい気持ちにもなったんや。


血の繋がりが大して重要ではないことは、この頃にはもう、十分理解してた俺やけど、マサは家族を求めてた。


誰かと比べて、自分に欠けたものばかりを探してしまう。


そういう頃だとはわかってても、どうにかしてやりたかったんや。


俺も清人も、もうこの頃には、自分のことなんて二の次やった。


今よりもっとちっちゃい頭で、俺らは懸命に人のことを気にしてたんや。


苦しくても、誰かが悲しい顔をするのが嫌だった。



「マサは純粋なんだよ、俺と違って。」


清人はしきりにそう言っていた。


きっと彼は優しすぎるんだろうと俺は、いたたまれなくなったことを覚えている。

< 29 / 339 >

この作品をシェア

pagetop