共鳴り
「…陸、家帰ってねぇの?」


問われ、俺は曖昧に笑った。



「理乃は多分泣いてるよ。」


「分かってるよ。
でも俺、こんな半端な状態でアイツには会えへん。」


「…レイコさんのこと?」


「それもやし。
俺の気持ちん中で全部片付かな、会ったらあかん気がしてんねん。」


理乃に会いたいと思う気持ちは変わらないし、今も頭の中はアイツのことばかりや。


けど、それでも、そんな言い訳ばかりを繰り返してるのかもしれない。


ただ俺には、勇気がないだけやろうけど。



「つーか、俺のことはえぇねん。
キヨちゃんは自分の体治すんだけ気にしときぃ。」


「…ごめん。」


らしくない、しおらしい姿。


やっぱり子供みたいで、俺は笑いながらその頭をくしゃくしゃっとしてやった。


それでも、あれ以来、雨を見ることがなくなったのは事実。



「レナちゃん、呼んできたるわ。」


そう言って、俺はきびすを返した。


ドアを開けるとそこには、長椅子に腰を降ろして携帯をいじる彼女の姿。


本当に、気を使ってくれてるらしい。



「ごめんな、レナちゃん。」


良いよ、と彼女は言った。


そして俺に買い物袋を差し出し、あげるよ、と言ってくれる。


優しい子で、清人と似過ぎてるんやろう。

< 290 / 339 >

この作品をシェア

pagetop