共鳴り
ふと、理乃の顔が頭をよぎる。


が、一瞬停止していただけなのに、レナちゃんがそんな俺を見過ごすことはなく、「ごめん、ごめん。」と曖昧にしか笑えない。


彼女は俺を見上げた。



「ギンちゃんはさ、本当はあたし達のこと気にしてる場合じゃないんじゃない?」


「…え?」


「家、帰ってないって聞いたよ。」


バツが悪くなり、やっぱり曖昧にしか笑えない。



「あたし、事情とか知らないけどさ。
大事なものを見失うな、って前に言われたことあるよ。」


大事なもの、と気付けば反芻させていた。


理乃は今、何をしているんやろう、誰のことを想っているんやろう、って、考えるより先に思ってる自分が居る。


あれから連絡を取ることも、もちろん家に帰ることもないけど、曖昧なままなのに変わりはない。



「俺な、罪の償い方とかわからへんねん。」


気付けば自嘲気味に言っていた。


コンビニの店内は、嫌に明るい流行りの音楽が流れている。



「でも、目を背けることでは何も解決しないよ。」


確かに、レナちゃんの言う通りやろう。


いつも清人は、俺とは違い、目の前のことから逃げたりはしなかったし、って。


俺は諦めるように息を吐く。



「ありがとう、レナちゃん。」

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