共鳴り
何があっても清人と居てくれて、ありがとう。


アイツに悲しい目をさせないでくれて、ありがとう。


そして、迷ってる俺の背中を押してくれてありがとう、って。



「キヨの好きな子がレナちゃんで、ホンマに良かった。」


今ここに居るのが花穂ちゃんじゃないことは、やっぱり少し寂しいと思う。


けど、それでも、きっと花穂ちゃんじゃ無理だったとも思うから。


ふたりが付き合ってるのかとか、そういうのはわからへんけど、でも、生きててくれてありがとう、って。


理乃が死んだら、俺は後悔してもし尽くせんやろう。


例えもう、俺のことが本当に嫌になっていたとしても、伝えなきゃならないことがあるのだと思い直した。



「俺も頑張らなきゃあかんみたいやなぁ。」


レナちゃんは笑っていた。


きっと言ってる意味なんてわかってないんやろうけど、だからなのか、俺も笑った。


傘はもう、必要ないらしい。



「あたしの家、ここからすぐだから、もう良いよ。」


「うん、ごめんな?」


やっぱり勘の良い子やなぁ、と思いながら、俺は急ぎきびすを返した。


理乃はこの時間、学校に行ってる頃やろう。


それでも俺は、居ても立ってもいられず、車を走らせた。


見慣れた通りを過ぎ、角を曲がったところには、少し古びたマンションが建つ。


風はすっかり涼しさを増し、あれから2ヶ月近く過ぎていたことを思わせた。

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