共鳴り
逸る気持ちを押してノブに手を掛けると、鍵が開いていることには驚いた。


まさか、と思いながらも玄関フロアへと視線を落とすと、何故かある、理乃のローファー。


息を呑んで室内へと入ると、目が合った彼女は一様に驚きを見せる。



「…りっ、くん…」


懐かしい呼び名に、何故だか泣けた。


ちゃんと学校行けよ、なんて言葉は今更出て来ず、いつの間にか痩せていた理乃がただ痛々しい。


互いに言葉は持てず、気付けば俺は、引き寄せるようにその体を抱き締めていた。



「ごめんな、りぃ。」


ホンマにごめん、ホンマにごめん。


呟くように、噛み締めるように繰り返すと、愛しさが溢れる。



「ずっと、めっちゃ好きやったよ。
今更なんわかってるし、りぃのこと傷つけたの、許してもらおうとも思ってない。」


でも、愛してんねん。


言ってみれば、涙混じりに震えていたはずの理乃は、ゆっくりと顔を上げた。



「…そんなの、信じられないっ…」


俺はそっとキスを落とした。


心臓はもうばくばくしてて、このままいくと爆発してしまいそうや。


抱き締めたまま、その肩口へと顔をうずめた。



「ちょっとで良いから、このまま聞いてて欲しい。」

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