共鳴り
相変わらず、心臓の音は嫌になるほどうるさい。


理乃はきっと何を言われるのだろうと恐怖しているんやろうけど、俺は息を吐いた。



「俺な、女抱くんが仕事やってん。
わかってたと思うけど、でも理乃が思ってるよりずっと残酷なことやってた。」


言ってる俺の方が怖くなる。


でも、もう何も隠すべきではないと思う。



「いつからか、もうわからんくらいにずっと前から、理乃は俺の中で“女”やった。
やけど、一番大事やったから、愛したらあかんって思ってた。」


沈黙が重い。



「お前が誰と寝てても口出したりしたらあかんと思ってたし、必死で“お兄ちゃん”になろうともしたんや。
けどやっぱ、無理やった。」


震えてしまいそうで、だから抱き締める腕に力を込める。



「俺、りぃしか愛せんみたいやから。」


理乃は俺の胸の中で泣いている。


答えを聞くのが怖くて、でも言葉ではこれ以上伝える術がない。



「りぃが俺のこと好きって言ってくれたん、嬉しかったよ。
傷つけるってわかってたし、あんなことしか出来んかったけど、でも嬉しかってん。」


ごめんな、って言葉以外見つからない。


彼女はただ、俺を突き放すでもなく、泣いている。



「もう遅いんやったら、俺は二度とりぃに会いにこんから。
それでりぃが幸せになれるんなら、俺、今度はちゃんと祝ってやるつもりや。」


「…そん、なの…」


理乃が戸惑うように声を漏らす。


俺は唇を噛み締めた。

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