共鳴り
「ホンマに?!」


目を丸くして問うた俺に、彼女は本当よ、と言う。



「お金も時間もあることだし、海外にでも行こうかと思って。」


「…海外、って…」


「ヨーロッパも良いけど、南の島も海が綺麗でしょ?
どっちにしようか迷ってるのよね。」


ねぇ、どっちが良いと思う?


聞かれたが、俺の頭の中はそれどころではない。


嶋さんのプロポーズは彼女にとって無意味だったらしく、おまけに海外に行く、って。



「そしたらきっと、時間なんてあっという間に過ぎるわよね?」


俺は顔を上げた。


多分レイコさんは、何だかんだ言いながら、嶋さんの出所を待ってやるつもりなんやろう。


そしてもしかしたら、塀の中に居るあの人のために、フォトレターでも送ってやるつもりなのかもしれない。



「素直じゃないなぁ、レイコさん。」


俺が笑うと、彼女も瞳を伏せるように口元を緩めた。


らしくないはにかむような顔やけど、ここにもきらきらを見つけた気になる。



「アンタは素直になれた?」


「…俺?」


「理乃ちゃんとのことよ。」


あぁ、と言う。


そしたらちょっと恥ずかしくなって、うん、と返した。

< 308 / 339 >

この作品をシェア

pagetop