共鳴り
理乃との暮らしは、楽しいという以外に言葉が見つからない。


一緒にご飯作って、一日の出来事を互いに話しながら食事を共にし、そして一緒の布団に包まって眠る。


ただそれだけの、変わらぬ毎日が幸せやと感じられる。



「あ!
俺、鍵返してなかったよな?」


思い出して、キーケースから彼女の家の合鍵を外した。


そして銀色に光るそれを、机の上へと置く。



「今までありがとう。
でももう、必要ないから。」


「捨てとけば良かったのに。」


「そういうわけにはいかんやん。
そんなん不用心やし、それにちゃんと会って返したかったから。」


言うと、彼女はクスリと笑った。


笑って、そしてアンタらしいわね、と一言だけ。



「あたし、アンタのそういうとこ、嫌いじゃなかったわ。」


レイコさんは再び外へと視線を滑らせた。



「感謝するのはもしかしたら、あたしの方なのかもしれないわね。」


やっぱりレイコさんらしからぬ言葉。


目を丸くする俺に、彼女は窓の外を見つめながら、目を細めた。



「ねぇ、あたしってアンタのこと好きなの?」


ゆっくりと、いぶかしげにこちらに向いた顔に、俺は噴き出したように笑う。


こんな告白なんて聞いたことないし、おまけに突拍子もない。


ついでに疑問系で問われても、って。



「ありがとう、レイコさん。」

< 309 / 339 >

この作品をシェア

pagetop