共鳴り
一度や二度ではなかった。


時には代わる代わる男が来て、震え続ける麗子と行為に及ぶ。


そこが世界の全てだと思っていた幼い彼女に逃げるなんてことは思い付くはずもなく、毎日が言われるがまま。


だけども慣れるにつれ、痛みも恐怖も消えて行く。


必死で自分を貪る男を前に、滑稽だと思いながら嘲笑う余裕さえ出来たそうだ。


小学生にしては少し大人びた顔と、それに相反する体つき。


母親との会話はなくなったし、もう学校に行こうとも思わない。


ただ、幼いながらにそうでなければ生きられないのだと思っていたそうだ。



「母親は、そのお金で覚醒剤を買っていたわ。」


付き合っていたのはヤクザの男。


その男と共に、彼女は覚醒剤を常用していた。


娘を見ず知らずの男に差し出し、その金で買ったクスリ。


でも、何か言えば殴られるかもしれないと思っていたし、飛んでる時の彼女は、異常に自分に優しかった。


だからまた、麗子は痛みを帯びた行為を繰り返した。


我慢すれば終わる、そしたらお母さんは機嫌が良くなる、と。



「自分が我慢すれば良いと思ってた。
でも、そんな日々はある日突然終わりを迎えたの。」


兄が帰ってきて、見られてしまったのだ。


怒り狂った彼は男を殴り飛ばし、母親に詰め寄った。


何も知らなかった兄は逆上し、そして自らを責め、手にしたのは包丁。



「兄は母を刺し殺したの。」

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