共鳴り
清人もまた、早く家を出たかった、というか、自立したかったらしい。


まぁあんな家庭状況やし、ずっとこそこそバイトしながら金貯めてたのも知ってたから、そう思うのも当然やったかもしれんけど。


実は俺もバイトしててん。


先輩んちの定食屋の皿洗いやったけど、やからこそ、働くことを選ぶのにも躊躇はなかった。


で、清人とは利害が一致したようなモンやな。


お互いひとり暮らしやと何かと金掛かるし、ってことで、どちらからともなく同棲しよう、ってなってん。


ルームシェアとか格好良いモンちゃうくて、ただの男のふたり暮らしやけど。


家賃も生活費も折半やし、ずっと一緒におったから、それこそ気心も知れてるやんか。



「あら~、アンタたち卒業しても一緒なのぉ?」


奈緒子さんは、そう言いながらケラケラと笑っていた。


俺ら悔しいけど未成年やから、部屋の保証人は清人のオカンになってもらったんや。


ママさんって言ったら怒る人で、とにかく雰囲気全部が甘ったるい女。


これが3人も子供おるようには見えん“女”そのもので、口調も香りも激甘なんや。


でも性格だけは、サバけてんねんけどね。


ホンマ、うちのオカンと全然違うねん。


あの人は自分の身なりも気にせんと働き詰めで俺を養ってたような人やったけど、奈緒子さんはクラブのママさん風やし。


そして、若い。



「そっかぁ、中学も卒業しちゃうんだもんねぇ。
それにしても子供って、放っといても勝手に育つもんなのねぇ。」


へぇ、ふうん、と何故か彼女は楽しそう。


俺は呆れまくりやったけど、清人はまるでそれが普通とばかりに煙草の煙をくゆらせていた。


ちなみに俺ら、煙草如きで注意されたことないねんけどね。

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