共鳴り
「奈緒子さんさぁ、そういうの良いから早くここ記入しろよ。」


「あらあら、キヨちゃんはせっかちねぇ。
そんなんじゃ女の子に嫌われちゃうぞ~?」


わーかったから、と清人はキレ気味。


こんな光景はいつものことで、やからこそ、清人は母親と正反対みたいな女が好きなんやろうなぁ、と思った。



「それにしても陸とキヨちゃんは兄弟みたいねぇ。
案外父親が一緒なのかもねぇ。」


で、マイペースを貫く彼女は相変わらず、煙草を吸いながら笑う。


正直どう接して良いのか困んねんけど、清人の苦労がうかがい知れる気がした。


いつもあの人は頭がおかしいから、って言うけど、失礼な話、ホンマそんな感じ。



「陸はまだ可愛げがあるけど、キヨちゃんはそうじゃないもんねぇ。
同じ遺伝子なのに何でかしらねぇ?」


何で俺らが血が繋がってる設定で話すねん。


そら、こんなんやから清人は嫌でもしっかりするんやろう。



「…アンタと居ると、ハンコ押すだけで日が暮れそうだよ。」


「あら、キヨちゃんってば面白いこと言うわねぇ。」


「嫌味言ってんだけどね。」


「可愛くないのよ、それがぁ。」


そして清人の眉間をつん、と指で突くが、彼はそれを鬱陶しそうに振り払う。



「ガキみてぇなことすんなよ!」


「まぁ、父親そっくり。」


清人は机の下で、必死で拳を握り締めてた。


奈緒子さんって人は、とにかく悪気もなく言うから、こっちも怒るに怒れん人やねん。


親が健在でも大変なんやなぁ、ってこれ見る度にいつも思う。

< 36 / 339 >

この作品をシェア

pagetop