共鳴り
清人は強がりな男。


悩んでるとこなんて決して顔には出さないし、例えば熱があったとしても、平気な素振りを見せる。


俺はそんな清人のために、料理ばかりが上手くなっていく。



「何?
勝手に俺の部屋入ってきて、りっくん襲う気?」


「アホ言うな。」


バイク雑誌が無造作に積み上げられている以外、これと言って何もない部屋。


ベッドで横になってる彼を前に、俺はため息を混じらせた。



「飯、ちゃんと食え。」


「余計なお世話。」


「じゃあ、お前が倒れたら誰が迷惑こうむるか考えろや。」


言ってやると、清人はバツが悪そうに目を逸らす。


あんなんでも料理が趣味の奈緒子さんやし、清人は中学時代、何だかんだで飯は食ってたと思う。


でも今は、本当に不健康そのもので、誰かの心配してる場合じゃないやろうに。



「俺が不満なんやったら、女でも呼んで介抱してもらえ!」


「…悪ぃ。」


子供みたいな顔で、清人は体を起こしてうな垂れた。


誰にも弱味なんて見せない男やけど、俺にだけは少なからず弱々しげな顔をする。


だから俺も放っとくことが出来なくて、肩をすくめるわけやけど。



「なぁ、好きでもない女と付き合ってて、お前楽しいん?」


問うたのに、答えは聞かれなかった。


清人は煙草を咥え、悲しそうな顔で宙を仰ぐ。


まるで真っ黒に飲み込まれていくような、清人の深く大きな心の闇。

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