共鳴り
≪第一章≫

別れと雨と

誰にでも、思い出したくない過去ってあるはずやけど。


俺の場合、それって中一の頃やねん。





小学5年のとき、親父が愛人作って離婚。


オカンは内向的な性格で、他人と接するのが苦手な人やった。


元々親父の転勤で見知らぬ地に来て過ごしていたこともあり、友達とかもおらんかったから、愚痴ったりも出来なかったとは思う。


でも、親父と離婚やん?


オカンだって地元に戻れば良かったんやろうけど、オカンの地元ってのもけったいなとこで。


古い風習に縛られたとこで、離婚してコブ付きで出戻りなんて、許されんかったんやろう。


やからオカンは、見知らぬ土地で俺を育てながらの生活や。


元々は専業主婦やったから、生活なんて激変やろうし、ホンマ大変やったとは思う。


けど、俺はそんなオカンが好きで、初恋もオカンやった。


なのに、まぁ早い話、体壊してもうてん。


それでもオカンは頑張り屋やった。


運動会も授業参観もちゃんと来てくれたし、給料少なかったみたいやけど、くそったれな親父がおらんくても、ふたりで楽しく暮らしとったんや。


もちろん俺は、オカンが病気になってるなんて知らんかったから、少なくともそう思っとったわけやけど。


そんなある日、事件は突然やった。

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