共鳴り
「そんなことないわよ、仕事は仕事だし。
OLさんだって好きで事務作業ばっかりやってるわけじゃなくて、仕方なく、って言うでしょ?」


それと似たようなものよ、とのこと。


妙に割り切った言葉で、「イク時の男の顔って間抜けなの、知ってる?」なんて笑う。



「…何で男嫌いなん?」


「あたしは馬鹿が嫌いなの。」


「女かて馬鹿やん。」


「別に、全ての女が好きとは言ってないでしょ?
それと同じで、全ての男が嫌いってわけでもないし。」


「…じゃあ、俺は?」


「あたし、アンタを好きなんて言った?」


やっぱりレイコさんは、可笑しそうに笑うだけ。


俺は少し、呆れていた。


とにかく何でこう、俺の周りってみんな、掴みどころがないんやろう、って。



「…なら、嶋さんは?」


ふと、気付いたこと。


レイコさんは嶋さんに対して、勝手とは言うが、決して馬鹿な男、と言ったことがなかったから。



「嶋さんなんて嫌いよ。」


軽く投げられた台詞は宙を舞うだけ。


嫌いなものだらけのレイコさんの、それが“一番嫌いなもの”やった。


今でもその理由は知らんけど、でもやっぱ、ふたりは何かあるんやろう。


俺とレイコさんがセックスしたのは、あの地獄の10日間以降、一度もない。


それは多分、そういう色んなことがあったからやろうけど。




俺は事務所に連れ戻された。

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