共鳴り
理乃の生い立ち、話さなあかんかなぁ。


アイツ、簡単に言えば捨て子やねん。


生まれて数日の赤ん坊やった頃、園の前に置手紙と一緒に捨てられてたんやて。


やから理乃は、家族を知らんねん。


普通はどんなんでも親がおるのが当たり前やけど、理乃はそうやないし、園のみんなが全てであり、家族やってん。


もちろん最初は病院で検査したり乳児院に行ったり、ちょっとしたニュースにもなったらしい。


けど、親は現れんくて、結局は捨てられてた園に戻ってきたんや。


そこで元気に暮らしてた時、俺と出会ったんやな。


もちろんそれは、俺が園長先生から聞いた話やけど、理乃は“当たり前”を知らん可哀想な子やってん。


それって園におるみんなそうやけど、やっぱ理乃は、そういう生い立ちもあって、みんなとちょっと違ってたんやろう。


そして多分、帰る場所がない俺に、自分と似たようなモン感じてたんやろうと思う。


だからかもしれんけど、とりわけ理乃は、俺の後ろひっついてるような子やった。


俺は学校行けば清人がおったし、帰って来てもバイトにみんなの世話にで忙しかったから、別にそこまで寂しさってなくて。


けど理乃は、次第に大きくなるにつれ、学校のみんなとの違い、自分の捨てられた理由を子供なりに考えてたと思う。


俺はすぐに園を出て自活しとったから知らんかったけど、理乃は俺にまで捨てられたような感覚になっててんて。


結局、大人は勝手や、って話になるんやけど。

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