共鳴り
みんな泣いてた。


そんなの嫌だ、ここじゃなきゃダメなの。


親元に帰るまでの一時預かりやけど、そんなんみんな、思ってなくて。


親んとこが一番幸せ、なんて考えは、幸せな家庭で育ったヤツが言うことやねん。


それでも俺はただ、園長先生の言葉を黙って聞いてた。



「まだ一年あるんだよ。
それまでにそれぞれ、これからのことを話していこうね。」


みんなが泣きながら首を振る中で、理乃だけは、呆然としてたんや。


理乃は生まれた時からここが全てやってん。


園を出ることはあっても、園に捨てられるなんて考えもしなかった、って後から言うてたけどな。


怖かったんやろうな、捨てられる、ってことが。


いらないから捨てられた、っていっつも理乃言うてたけど、アイツにとって、それって一番の恐怖であり、トラウマやねん。


記憶なんかなくても、意識の奥底に沁み渡るほどやってん。



「…りっくん…」


理乃は俺の服の裾を掴みながら、不安そうな顔をした。


太陽みたいやった理乃の、初めて見せたそんな顔。


大丈夫や、とは言えんかった。


俺は清人じゃないから、嘘でもそんな気休め言える人間じゃない。


理乃だけは、何とかしたらなあかんって思った。


ぎゅって抱き締めてやったらアイツ、子供みたいに泣いてな?


いや、小学生の子供やってんけど、いつもはめっちゃ大人ぶっててん。


それが、うわーん、って泣くねんで?


どんだけ辛いねん、それ。

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