共鳴り
来ないでよ、と彼女は即答。


けど、行ってみたらレイコさんは玄関の鍵開けててくれて。


締め忘れただけよ、って言ってたけど、結局面倒見の良い人なんやろう。


似たようなことがそれから何度かあって、その度に彼女は、同じ態度で同じ行動。


俺は笑ってた。


そしてそんなことが続いたある日、「でもそれって危ないで?」って言ったら、「アンタが言う台詞?」なんて言いながらも、相鍵くれてん。


それから俺は、夜な夜な彼女の部屋に忍び込み、ベッドの半分を奪うことになるんやけど。


もちろん、エッチなことはナシや。







「俺な、仕事以外でセックスせぇへんねん。」


いつしかそう思うようになっていた。


ある意味職業病かもやけど、誰とヤッても仕事のこと考えてしまうし、そしたら気持ち良くもなれなくて。


人を愛する気持ちとかも、全部塗り潰したみたいに消えてたんや。


馬鹿な子ね、と彼女は言う。


全てが完璧で、そして物事を冷めた目で見てるくせに、どこか母性を感じるねん。


やっぱりレイコさんは、不思議な人やった。



「セックスなんて嫌いよ、あたし。」


嫌いなものだらけなレイコさん。


ちなみに好きなものは、ブラックのコーヒーとジョン・レノンやそうや。


部屋にはいつも、古めかしい曲が流れてて、淹れたてのコーヒーの香りと、そして間接照明。


彼女は俺と同じで薄明かりがなくては寝られない人間で、やっぱ似たようなもんを感じてしまうねんな。


まぁ、迷惑よ、って言われるんやろうけど。

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