共鳴り
築年数のちょっと古いアパートは、雨が降ると湿度が籠る。


壁に頭を預けるように耳を傾けると、隣の部屋からはすすり泣くような声が聞こえる始末。


全部が耳触りで、煙草の味が嫌に苦々しかった。




中三にもなれば、理乃もれっきとした“女”になっていた。


まだ少しあどけなさが残る顔やけど、やっぱ体は大人やねんな。


別にそういう目で見てるわけちゃうけど、俺もアイツも多分、こんな生活、心のどこかでおかしいって感じてたんやろう。


理乃の幸せだけを願ってた。


やからアイツが俺に対して、叶わん恋心抱くなんて嫌やってん。


辛い恋して泣いてる理乃が嫌いやった。




いつから“お兄ちゃん”って呼ばれるようになったっけ?


いつから一緒にキッチンに立たんくなった?


いつから一緒に寝ることなくなったっけ?


いつから理乃は、笑顔を曇らせて泣くばっかになったんやっけ?




俺らはこういうために一緒に暮らし始めたわけじゃなかったはずやん。


どこから狂ったのかは、いっつもわからん。


理乃が背伸びして、化粧して髪の毛染めて、「早く大人になりたい。」って言うねん。


あれほど嫌ってた“大人”になって、どうするつもりなんやろう。


俺は理乃のこと、抱いてやることは出来ないんやで?




妹を望んでたはずの理乃が、どんどんどんどん女になる。


俺、怖かってん。


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