共鳴り
ある日、帰宅すると理乃が俺のビールを飲んでいた。



「お前、何やってんねん!」


思わずキレて声を荒げると、泣きそうな顔で彼女は反論する。



「お兄ちゃんだって昔から飲んでたじゃない!
煙草も吸ってたし、彼女だって居たじゃない!」


なのに何であたしは、何もかもダメなの?


思わず言葉に詰まると、理乃は俺に向かい、手当たり次第にその場の物を投げつけてきた。


こんな言い争いはいつしか日常になっていて、どうにもならない苦しみの渦に落ちる。



「そんなんしたらあかんやん、りぃ。」


泣いてても、俺はなだめることしか出来なかった。


可哀想でしかなくて、でもそんな瞳を向けると必ず、理乃は悔しそうに唇を噛み締める。



「…りっくんのこと好きなのに、何でダメなの…?」


吐き出すような、彼女の声。


俺はやり場のない悲しみを堪え、目を逸らした。



「りぃはまだ子供やから、勘違いしてるだけやねん。
身近な男なら誰でも一緒やん。」


まだ子供だから、勘違いしてるだけやから。


まるで自分自身に言い聞かせるように言うと、理乃は決まって捨てられた子供のように瞳を揺らす。



「最低だね。」







そんなんわかってんねん。


でも、どうすることも出来んやん。



翌日――

理乃から彼氏が出来たと告げられた。


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