共鳴り
清人は多分、そういう俺の変化や戸惑いを、一番身近で感じて、そして気付いてたと思う。


でも、だからこそ、それさえも背負うように、アイツは自分を追い込むねん。


俺と理乃がこんな風になったのは自分の所為で、だから自分も誰も愛さない、って。


そんなんじゃないねん、そんなんじゃなくても俺は多分、理乃に手を出したりする勇気、どっちみちなかったはずやから。


清人が酒に逃げるようになった。


クスリやってるよりはマシやけど、やっぱ見てて辛いもんがあったわ。



「夜は長いなぁ、キヨ。」


清人は何も答えなかった。


俺らはやっぱり闇の中をひた走ってて、どこまで行っても光が見つからない。


だったらせめて、清人にだけは、小さな奇跡が訪れてほしかった。


誰か、男でも女でも良い、清人を苦しめるんじゃなく、ちょっとだけでも癒してやってほしかってん。


清人は俺の荷物を背負おうとする。


だからこそ、そんな清人の荷物を軽くしてやれる誰かを求めてた。


俺じゃもう、無理やってん。






レイコさんはいつも、俺を馬鹿だと言い、邪険にしながらもベッドの半分を開けてくれる。


突然現れる俺に、勝手ね、勝手ね、と言いながら、それでもブラックのコーヒーを淹れてくれる。


清人は何に救われてた?


独りっきりの孤独の中で何を思い、そして何を感じてたんやろう。


みんなが泣いてるような雨に打たれてみたり、苦々しいほどの酒を煽ることで、お前の心は軽くなるん?


そんなことも聞けないほど、いつの間にか俺らの距離も離れてたんやね。


この立ち位置から、俺らはどっちに向かって踏み出せば良いんやろう?


真っ暗で、何も見えへんわ。

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