共鳴り
マサは社会人になり、あの家を出たことで、すっかり落ち着いていた。


それと共に、“兄”としての自覚と責任感を持ち、アユを育てているみたいや。


そして、しきりに清人の心配をしていた。



「また兄貴から金が振り込まれてた。」


マサもまた、自分の所為で兄の負担を増やしていると考えていた。


みんなみんな、不器用な優しさを持ってる。


そしてそれを持ってるからこそ、苦しんでるんやろうとも思う。






「なぁ、キヨ。
マサがお前のこと心配してたよ?」


「でも俺、アイツに合わせる顔ねぇし。」


「けど、会いたがってた。」


「無理だよ、こんな仕事してんだし。」


清人も俺も、この仕事のことは誰にも話していない。


だから余計に苦しくて、でもどうすることも出来なかったんや。


一緒に酒を飲むと、いつも決まって悲しい話になる。



「理乃は?」


俺は黙って首を横に振る。


大事なものの話をしてるはずなのに、なのにちっとも幸せな顔になれない。


酒の味が喉に沁みて、苦さで胸の奥が焼けてしまいそう。


昔はこんな時、決まって花穂ちゃんを呼んで元気をもらってたはずなのに。


なのに今ではもう、会話にすらのぼらない名前。


心にぽっかりと穴が開いてしまったみたいで、それを塞ぐ術は見つけられない。



「…俺、こんな寂しがりやなかったのに。」


俺が笑うと、清人も苦笑いを浮かべた。


長い長い夜は、そうやって繰り返される。

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