共鳴り
「何それ、俺が理乃に手出す心配でもしてんのかよ?
それより今のお前の方がよっぽど危ない顔してんの、わかんねぇの?」


瞬間、唇を噛み締めた。


つまりは清人は、俺の方が理乃に手出しそうな顔してる、って言いたいんやろう。


目を逸らしながら、嫌悪感に襲われた。



「心配してんじゃねぇよ。
家まで真っ直ぐ送り届けてやるから。」


そして清人はすぐに俺に背を向けた。


理乃はそんな清人の顔を確認し、こちらを一瞥した後、黙って彼に手を引かれていく。


去っていくふたりの後ろ姿を見送りながら、俺は苦々しさの中で拳を握り締めた。


全部理乃のためやのに。


なのに何で、何もかもが上手くいかんねん。


携帯の着信音が夜の騒喧の中でどこからともなく響いて聞こえるが、俺は虚しさの中で宙を仰いだ。

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