恋する背中をつかまえて
「ねぇ見て?
この薔薇ってダイアナ妃だよ。
こっちはエリザベス女王」
色鮮やかな薔薇とは違い、
穏やかな桜色に近い薔薇。
しかし
佇まいは凛としていて、
名前を付けるだけの
薔薇だと思える。
「…本当だ…
そんな薔薇あるんだね」
薔薇を見つめていた紗雪が、
何かを決めたように
口を開いた。
「美羽…
ダイアナ妃もエリザベス女王も、
みんな同じ女の子なんだよ。
きっと色々あったけど、
それでも誰かを好きになった。
美羽だって同じ女の子なんだよ」
「…紗雪…」
「誰かや何かを犠牲にしても、
手に入れたい恋って
あたしはあってもいいと思うよ」
凛とした澄んだ声色で。
問いかけるようにに放った言葉は
あたしの心に染み渡っていった…
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