恋する背中をつかまえて


微かに震えた声を隠すように、
開き直ったような
乾いた笑い声が聴こえる。



「ははっ…美羽ちゃんも
桜井に似てきたよ。

…お前の心配ばかりだ」


体調はどうだとか、
元気にしてるかとか。

言われてみれば、
浅野に矢継ぎ早に
尋問のように聞くのと
同じ質問ばかりだった。



「ちゃんと…
桜井しか見えてないから、
あんまり泣かせてばかりだと

お前…わかってんだろうな?」



浅野の語気が無意識だろうが、
段々と強くなっていた。



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