恋する背中をつかまえて


どれだけ離れても、
美羽を忘れる日はなかった。

いつも美羽の顔を思い出す。



愛らしい瞳。

長い睫毛が優しく揺れ、
視線の先にはいつも俺がいた。



耳朶が可愛くて…

ピアスを開けるのは
想像するだけでも痛い
って涙目になっていたっけ。



…そうそう、
ルージュを買ったこともあった。


一緒に選ぶって聞かなくて、
化粧品売場へ美羽に
腕を引っ張り込まれたよな。



あの見た目か弱い腕の、
どこに怪力が眠っているのか。



未だに俺は不思議なんだけど。



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