恋する背中をつかまえて


そっと左手で窓を開けると
心地良い夜風が滑り込んできた。

思わず目を閉じて、
深呼吸をしながら見つめると。


真顔だったはずの
眼が優しかった。





いつもこんな眼で見てたんだ。


緊張ばっかりしてて、
眼を直視出来なかったから。

全然知らなかった。





この優しい茶色の瞳の中に、
あたしは映っていたんだね。





「もうすぐ着くから待ってろ」


ぶっきらぼうなこの声も、
きっと照れてる裏返し。



面白くなさそうなこの表情も、
たくさん見てきた。



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