恋する背中をつかまえて
「…美羽」
「うん?」
真っ直ぐ向いたままの崇志は、
あたしの左手を離さないで
名前を何度となく
繰り返し呼んだ。
「美羽…」
「なぁに? あたしが減る」
いつか崇志が言ったみたいに、
あたしも返してあげた。
「離れて逢えなかった分だけ、
美羽の名前いっぱい
呼びたかったんだ…」
ぽつんと独り言のように
波の音にかき消されそうな程、
そうっと小さな声で。
「…何よ、それっ?!」
言葉とは裏腹に嬉しかった。
涙目になりそうなくらい。
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