恋する背中をつかまえて


上着の胸ポケットから
取り出した封筒を、
何も言わずに差し出してきた。





「これは…?」

「明日の野球のチケット」



崇志が言うと、
さらりと言ったみたいに
聞こえちゃうけど。

きっとどんな言葉より
ずうっと意味が深い。



そして重い。



「ちゃんと送迎させる。
独りにしたくないんだ」

わかるな?と念を押す。


頷くとほっとしたような
顔色に変わった。



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