恋する背中をつかまえて


お弁当を食べる手を休め、
遠い目をして黙り込んだ後
あっけらかんと言った。



「そのまま会いたいって
言っちゃえばいいのよ。

会いたいって言われて、
うれしくない人なんか
どこにもいないでしょ?」

「だって…
忙しいかもしれないし…」

「忙しかったらちゃんと
掛け直してくれるわよ。

昔と違って、ちゃあんと
着信履歴が残るのよ?

悩む暇があったら
一度掛けてみなさい。


電話かけた理由なんて、
声が聞きたかったって

…それだけでいいのよ」



心に響いた。



掛けていいんだ。

会いたいって言っていいんだ。


そう言われると、
桜井さんの声が頭の中に
静かに聞こえてきた。



「ちゃんと連絡しろよ」



って。



.
< 33 / 423 >

この作品をシェア

pagetop