恋する背中をつかまえて


繋いだ右手に力が込められて、
反射的に崇志の眼を見つめた。



「うん?」



何かを決める時の眼。

今から決戦に向かうのかな?
と不意に閃いた。



「これから球団がセッティング
してくれた記者会見に

…行ってくるから」



ゆっくり話す言葉にも
溢れ出す熱意と想い。


あたしには、
ここで見てるしか
出来ないけど…



「…ここで見守ってて?」



眼を逸らすことなく、
あたしは静かに頷いた。


「行ってらっしゃい…」


あたしの頭を撫で、
足音だけが遠ざかる。

ついていくことは許されない。



気持ちだけ崇志に託した。



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