恋する背中をつかまえて


この小さな細い指で、
俺の心を掴んだまま離さない。





…たいした指だ。



「ほら。
もうちょっと手元を見て
包丁動かせよ?」

「むかっ(●`ε´●)
ちゃんと見てるもん!」

「ちゃんと見てる割には
面白い手ぇしてるぞ?」



絆創膏だらけの両手を眺めつつ
つい笑みがこぼれる。


何気ないことだけど。

こういう時に、
美羽と一緒に暮らしていて
良かったと思う。



見えなかった表情が
いっぱい見える。

知らなかった表情が
いっぱい飛び出す。



彼女が強かったり
彼女が弱かったり…。



それもまたうれしい。



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