恋する背中をつかまえて
掻い摘んで話せる内容なのか。
…きちんと話すべきか…
「授かったかも…って?」
声に反応して、
肩に力が無意識に入る。
…どうして…
「…そうなのね?」
矢野さんの静かな声音が
辺りを包み込んでいく。
世界からあたしだけが、
切り離されてしまったような…
周りからどんどん色を奪って
消えていくようで、
気が遠くなりそうになる。
「は…はい…」
うまく声が出ない。
直球勝負を
真っ向から挑まれたような、
言い知れない緊張が走る。
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