恋する背中をつかまえて


次の日。


あたしのお気に入りの
ケーキを手にドキドキしながら
玄関のドアを開いた。



傍らには大好きな人。



…うん、大丈夫。
この人がいてくれれば。

言い聞かせるように
足を踏み入れると、

お母さんの脚が見えた。


「いらっしゃい」



抑揚のない静かな声。


ゆっくり暖簾を持ち上げた、
お母さんの表情は
ちょっぴり硬めだった。



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