恋する背中をつかまえて
書類の説明をしながら、
視線は下を向いたまま。
浅野さんがつぶやいた。
「…美羽ちゃんがちゃんと
帰ってきてくれないと
仕事が捗らなくて
俺が困るんだからね…?」
いつも…迷惑ばかりかけて。
あなたの邪魔ばかりを
してる気がしてた。
根気強く、何度も教えてくれる
浅野さんに必死でついていった。
怒るようなことがない分、
形として残らない仕事を
ちゃんと出来てるか
いつも不安だった。
営業みたいに数字にならない、
あたしの事務の仕事。
泣きそうなくらいに
嬉しすぎる言葉だった。
「…しっかり休んでからでいい…
僕の下に帰ってきてくれよ?
やってもらいたいこと、
まだまだたくさんあるんだから」
少しでも早く
君がいて良かったと
言われるようになりたい。
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