恋する背中をつかまえて


「よぉ、久し振り」
と左手を挙げる人がいた。


間違うはずがない、
会いたかった人だった。


浅野さん、ごめんなさい。

申し訳ないけど、
上司なのに視界に入らない。

「この子はね俺の会社の後輩。
香山 美羽ちゃん。
ドラフトの時から
ファンなんだって」

ここまで来る間に、
浅野さんに熱を込めて
話していたんだ。



「どうも、初めまして」



差し出されたごつごつとした指がたまらなかった。



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