星に願いを…
モノクロの風景。

輪を作る人達は、一様にカメラを構えている。
フラッシュだけが、白く輝くモノクロの世界。
カメラのシャッター音だけがリアルに感じられた。

その中央に、サングラスを掛けた、長身の女性が立っている。
その女性の真っ赤に塗られた唇とそれに合わせたスーツだけが、その世界に色を持たせていた。

その女性が、ゆっくりときれいに歩き出す。

その歩く姿は、ショーを見ている様だった。
真っ直ぐに何も捕らわれる事なく、揺らめく事もなく。
世界の舞台に立つ、自信に満ち溢れた、プロモデルのウォーキングだった。

女が歩き出すと、カメラマンや記者達はそれを追う様に次々と言葉を投げ掛ける。
いや、だと思う。

男に聞こえているのは、シャッターの音だけだった。


男がゆっくりとその女に向かって、カメラを構える。
ただの欲望だ。

仕事だからじゃない。女を撮ってお金が欲しいからじゃない。

ただ、その女の世界を色を持った世界を一枚に納めたかった。女の1人舞台を…

女が男の前を通り過ぎ様とした瞬間、女の足が止まった。

ゆっくりと男の方へ向いたかと思うと、サングラスを外し、真っ赤な唇で、冷たい微笑みを向けた。
そのまま男に近付く。

カツン―カツン―
真っ赤なパンプスのヒールの音が響いた。
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