星に願いを…

男は、目をゆっくりと開けると、ギシッとオフィスチェアを軋ませながら立ち上がった。


自分の事務机の引き出しから、ファイルを取り出すと、時計に目をやる。

―A.M.0243―

男はそのまま正四角形に作られた部屋の扉に向かう。

その途中で、必死にPCに向かう青年に話しかけた。
｢悪いが、ちょっと休憩だ。後頼む。｣
その言葉にPCの画面に釘付けだった青年が慌て顔を向けた。 ｢ちょっと待って下さいよっ。原稿の締め切り、今日の9時までですよっ。｣
｢何、そんなに慌てなくても課長のOKが出ないと載るか載らないか分からないネタなんだ。｣
そんな男の言葉に青年は呆れた様に言った。
｢そりゃないスよっ。川島さんが押してたネタじゃないですか。人手が欲しいて、言うから俺が手伝ってたのに…。｣
その言葉に川島は、苦笑いを浮かべた。 ｢すまないな。俺の病気なんだわ…。
もう何年も前の芸能ネタを引っ張りだすのわ…、まっ、文章は詰めてくれよ。
取り敢えず課長には見せるからさ。｣
それだけ言うと、川島は部屋の扉を開けて出て行った。
部屋に取り残された青年は、扉を見つめながら、ため息をついた。
｢本当だったんだな。もう何回もこのネタを推すのに、結局ムダになるの…。｣
青年は、PC画面の見出しに目を向ける。
『伝説のモデル【SEIKO】の謎っ』

｢面白そうだと思うんだけどな…。このネタ…。｣
青年は、机にべったりと顔をくっつけながら言った。
｢課長の言ってた事は本当だったのか。
川島さんは、SEIKOネタを押しては引くの繰り返し…。｣

―「あんまり力いれずに、川島に付き合ってやってくれっ。」―
課長に言われた一言を思い出して、青年は項垂れた。