国王陛下は純潔乙女を独占愛で染め上げたい
黒雲が我が物顔で空を占領し、月明かりのない暗い静かな回廊を、
手燭を持った二人の少女が、そろそろと歩んでいた。
「この火が絶えると大変なことになるから、充分気をつけてね」
背の高い少女が、あどけなさを残すもう一人の少女に注意を促しながら、丁寧に炬火を交換する。
「まだまだあるから、大変だけれど頑張りましょう」
幼い少女は眠い目をこすりながら、はい、と頷いた。
二人は、次の炬火を交換するためにぐるりと廊下を回ると、人影を見つけて悲鳴を上げた。
「だ、誰です!どうやってここに入ったのですか!」
時々、純潔である巫女を狙って、夜の神殿に忍び込もうとするやからがいるとは聞いていたけど、
まさか自分たちが夜回りのときにあたるなんて。
少女は自分の不運を呪った。隣にいるのは夜回り当番は今日が初めてという小さな子供だ。
震えているばかりで、何の役に立ちそうもない。
少女はせめて賊の顔を見てやろうと、手燭を人影の方へと差し出した。