国王陛下は純潔乙女を独占愛で染め上げたい

空はますます黒雲に覆われたが、舞台はいよいよ佳境に入り、レアの祝詞が始まった。

レアの楽器のような澄んだ声があたりに響き、誰もがこの例祭の大成功を確信した。


祝詞がすめば、神への豊穣の祈りが天に届いたとされ、例祭は終了となる。

クリナリア祭の出来が、農作物の出来を左右するが、

今までの舞を見る限り、今年は大豊作になるに違いないと、誰もがほっと胸をなでおろした。


その時、舞台の上から、突然レアの声をさえぎるように、ドシンという音が響き、

同時に、怒声にも似た神官たちの大きな悲鳴が上がった。


それは、舞台の端に置いていたかがり火の台が倒れた音だった。

何本もの炬火が舞台に転げ落ち、いくつかは舞台の下まで滑っていった。

辺りに生えている湿り気を帯びた草を焼き尽くすほどの火力で、それらはあっという間に燃え広がった。


「早く消せ!!」


マルスは、警備していた兵士たちにすばやく命じたが、民衆は広がる炎に怯えて大混乱になった。

逃げ惑う民衆が押し合って倒れ、広場は一転して恐怖の渦に巻き込まれた。







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