国王陛下は純潔乙女を独占愛で染め上げたい
『我等がウェスタの神に、祈りと感謝を捧げます』
炎がせまり、非難しなくては危ないというのに、何事もなかったように祝詞を唱えるレアに、
ウルウは、気でも狂ったのかと本気で心配になった。
しかし、レアはまっすぐに前を向き、両手を胸の前で組んで祈りの言葉を続けた。
その張りのある艶やかな声は、金切り声でもないのに遠くまで良く響き、
それに気付いたものは、皆はっとしたように振り返って逃げる足を止めた。
一人、また一人と、民衆が冷静さを取り戻すと、
まるで、今まで荒れ狂っていた海が、凪いだかのように、混乱は静かにおさまっていった。
あたりが再び静けさを取り戻した頃、ぽつりと、天が泣き始めた。
「雨だ」
誰かの声がしたと思ったら、急に桶をひっくり返したような酷い雨が降り始めた。