国王陛下は純潔乙女を独占愛で染め上げたい

ラウススは、一呼吸おいた後、決心したようにレアの両手を自分の掌で包み込んだ。


「落ち着いて聞いて。母さんが・・・、亡くなったんだ」


レアは、心臓の鼓動が痛いくらいに強くうちつけ始めたのを感じた。



母さんが・・・死んだ?!



レアは、ハッと息を吸った後、どうしていいかわからなくなった。

うまく息を吐くこともできない。息の仕方を忘れてしまったみたいだ。

無音の世界というものがあるなら、それはきっと、今自分が見ているこんな風な世界なのだろう。


それは奇妙な感覚だった。

人々の動きはちゃんと目に入っている。それなのに、なぜか音だけが一切耳に届かない。

ただ自分の体の中のすみずみまで流れる血液だけが、どくどくと音をたてて脈打つのがわかる。


ラウススが、自分に何か話しかけた気もする。

しかし、それがなんなのかわからないまま、レアの体はぐらりと傾いだ。


「レア!!」



・・兄さん。



レアの意識は、そのまま闇の中へと沈んだ。







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