国王陛下は純潔乙女を独占愛で染め上げたい
「俺はずっと、政など、くだらないものだと思っていた。
なぜそんなことを俺がやらなければならないのだと。王になど、なりたくてなったわけではないのだと。
そして、誰もそんな俺の考えが間違っていると指摘してはくれなかった。
・・いや、それは言い訳だな。俺は自ら考えるということを放棄していたんだ」
マルスが何を言い出すのか、レアにはまったく見当がつかなかった。
しかし、不思議とマルスの話に引き込まれて、レアは彼の一言一言を聞き逃すまいと真剣になっていた。
「形ばかりの王という自覚はあったが、それで良いと思っていた。
黙っていても、伯父のアニウス大臣がうまく国を動かしてくれる。
俺は楽であればそれでいいと思っていた。なにもかも面倒だった。生きることも--」
だが、とマルスはレアの手に、自分の掌をかぶせるように重ねた。
レアの肩がびくりと揺れたが、マルスはそのまま語り続けた。
「お前に会ったときから、俺の中にあるちっぽけな世界が、音をたてて崩れ始めた」
レアの澄んだ瞳に映る自分の真剣な顔。マルスは、ここへ来たのが正しい判断だったと自信を深めた。