国王陛下は純潔乙女を独占愛で染め上げたい
「いつか、王として、お前が俺を認めてくれる日が来たら・・・、
俺の妃になってほしい。
以前、お前に告げたような、神の代理人としての俺ではなく、
人間の・・、本当の、俺自身の妻に」
レアの宝玉のような瞳は、瞬く間に潤んで、ゆらゆらと揺れながら輝いた。
「マルス様。私は・・・」
否定の言葉をつむごうとしたレアの口元を、マルスは、すばやく掌で覆った。
「頼む。今は何も言わないでくれ。
その時がきて、それでも俺が、お前の夫にふさわしくないというならば、拒否すればいい。
男らしくきっぱりとあきらめよう。
だが、どうか、ほんの少し、俺に時間を与えてほしいのだ」
それは、以前にマルスが神の妻=自分の妻だと告げたものとは、まったく性質の違う、本物の求婚だった。
マルスの求婚はあまりに突然だったが、それ以上にレアを驚かせたのは、
自分にマルスを選ぶ権利を与えるような言い方を、彼がしたことだった。
身分を考えれば、レアは王命に逆らうことなどできるはずもない。
ニュクスの台詞を思えば、王命で自分を妾にすることも、
一晩の相手として捨て去ることも、不可能ではないはずだった。
それなのに、わざわざこんなところまでやってきて、自分に条件付の求婚を捧げる。
マルスのしていることは、いかにも宮殿の“常識”からはずれていた。