国王陛下は純潔乙女を独占愛で染め上げたい
アニウスは、王族の関係者であったので、王宮の端に、個別の部屋を持つことを許されていた。
王宮から少し離れた場所に、豪勢な本邸があったが、王宮の中にある部屋も、広さを除けば、豪華さでは負けていなかった。
「シギネア様がいらっしゃいました」
アニウスが娘を呼びつけてからほどなくして、
侍女がシギネアを連れてくると、アニウスは、目配せして侍女を下がらせた。
上級巫女が、一般庶民を診るのに対して、上級神官は、貴族の施薬を行う。
貴族は、病人を動かしたりはしないので、連絡を受けるたびに、
上級神官が、助手である中級神官を連れて、往診することになっていた。
「お父様。お加減が悪いと聞きましたが」
シギネアは、上級神官らしく、施薬の道具を持参していたが、手伝いの神官は部屋の外に待たせてあった。
殺しても死ななそうな父親のことだ。どうせ仮病に決まっている。
シギネアは、血色の良いアニウスの顔を見て、やはり、と口元を緩めた。
「よくきたな、シギネア。実はお前に話があるのだ」
アニウスには、多くの女性との間に大勢の子供がいたが、本妻の子供はシギネア一人で、
目の中に入れても痛くないほどのかわいがりようだった。
それをわざわざ、神殿へとやったのは、自分の力でシギネアを神官長にしようと目論んでいたからだった。